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 聴覚障害を扱った物語


星の音が聴こえますか

星の音が聴こえますか

松森果林 著

小学校から高校にかけて徐々に聴覚を失っていった著者、松森果林さん。
聞こえが悪くなった当初は何とかそれを隠そうと努力されたようですが、子供のことですから当然隠しおおせるわけもなく、友達のいじめや学校でのつらい体験などで心が挫けそうになっていきます。
もっとも辛かったのは自分が「障害者」である事を自覚させられたときで、降りしきる雪の中に呆然と倒れ込んで凍死寸前にまでなった経験も語ってくれています。
さて、そんな著者が立ち直って新たに人生を歩き出せたのは、日本で初めて聴覚障害者を受け入れる体制を整えた「筑波技術短期大学」のデザイン学科に入学できたおかげでした。
それ以降の大学生活やその後の結婚、出産、家族との関わりなどが本当にはつらつと描かれており、元気に生活する姿を応援しながらページをめくりました。聴覚障害をたんなるハンディとしてではなく、生活のバネとして捉えている著者の前向きな思考もよくわかります。
一番感心したのは、この本の題名である「星の音」。星の音ってなんだろう、健聴者だってそんな音は知らないのに・・・と思って読み始めたわけですが、これが香りのコンペで著者が新人賞をとった時の香水の名前だったとは。そういえば香りの世界には聴覚障害者も健聴者もないんですね。
通常耳の悪い人に意思を伝える手段としては、視覚や触覚を頼りにしてしまいがちです。例えば火災の警報を伝えようとすれば光の点滅や振動などによるものをすぐに想像してしまいます。でも匂いで知らせる火災警報器や匂いで起こしてくれる目覚まし時計、匂いで着信相手が分かる携帯電話などが検討されていることをこの本で知りました。著者も香りを使ったユニバーサルデザインの仕事に携わっておられたようですが、もっともっと嗅覚を利用する商品が開発されてこないかと期待をもたせてくれた一冊でもあります。

それでは本書で心に残った一節をご紹介しましょう。

先生が問題を言うが、聞こえない。全部聞き取れないわけではない。部分的に聞こえなかったりするのだ。
立ったまま、どうしたらいいかわからなかった。
先生がもう一度繰り返したようだが、焦ると余計に分からなくなってくる。顔が熱くなる。先生がじっと見ている。
教卓のすぐ目の前で立たされた私は、背中にクラスメイトの視線をいっせいに浴びた。
何か言わなきゃ。何か言わなきゃ。

「・・・・分かりません」

やっとの思いで喉を振り絞る。
周りの生徒がどっと笑う。皮肉なことに先生の声は聞こえないのに、彼らの高い笑い声は聞こえるのだ。

「立ってなさい」

そうして先生は次の生徒を指していく。答えで着席する生徒。答えられずに立たされたのは、私のほかに男子がほんの二人ほどであった。悔しさと恥ずかしさで思わず涙がこみ上げてくるのを必死にこらえた。

答えが分からないんじゃない。
先生の言ったことが、問題が聞こえないのだ。

こんなことが増えると、「勉強のできない子」 「人の話を聞いてない子」「反応が遅い子」、そんな風にまで思われるようになった。


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