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聾者、突発性、中途失聴、老人性難聴者などが送る様々な人生
このサイトは子供からお年寄りまで広い年代にわたっての聴覚障害支援用品について述べておりますが、ここでは特に後期高齢者(老人性難聴等も含む)などへの支援用品選択に関する注意点をあげてみたいと思います。
大きく分けると以下の3つの注意点があります。
では、それぞれについて詳しく述べて参りましょう。
お年寄りになればなるほど指先の感覚も鈍くなりますし、操作手順を覚えるのも思い出すのも難しくなりますので、扱いやすさはとても重要です。
特に、小さなボタンやダイヤル類の操作はお年寄りにとっては最も苦手とするものですのでこの点の配慮は忘れないことです。
例えば本サイトで取り上げている「耳あな型補聴器」などは、電源のオンオフや電池交換、ボリューム設定などで細かい操作が必要になりますので、本人だけで使いこなすにはハードルが高すぎます。
耳あな型に限らずボタン類の小さなものは好ましくありません。
使用レポートもある「首かけ集音器」も耳あな型よりはましですが、ボタン類が小さすぎるうえに操作方法がややこしいという、高齢者に向かない製品の典型です。例えばボリューム調整は押し釦式なのにモード切替はスライド式になっていますが、このあたりは統一したいところですね。
それと一番残念なところはモード切替スイッチで、3つのモードを一つのスライドスイッチで切り替えるようになっていますが、このスライド幅がとても小さいので真ん中のモードを選択するのがとてもむずかしいわけです。
先に上げた2つは共に製品を(耳とか首などの)然るべき位置に設置した状態で操作するようになっていますが、高齢者が使用する場合は補聴器にしても集音器にしてもできるだけ手元で操作できるタイプのものを選びたいものです。
操作性に関して言えば、「みみ太郎」モバイルタイプのように手元で回転型ツマミを回すことによって電源のオンオフとボリューム調整が行える方式が一番使いやすいような気がします。
お年寄りは老人性難聴以前に老眼が進行し始めるのが普通ですので、小さな文字やスイッチ類を判別するのは困難です。
文字はできるだけ大きく判別しやすいフォントを使ってほしいのはもちろんですが、必ずしも高齢者専用品として製品化されるているわけでもないでしょうから、デザイン面を無視して徒に文字を大きくするわけにもいかない場合があるでしょう。となれば、文字を見なくても判るようにデザインされているのが一番ですね。
この視認性については、本サイトで取り上げている電話の音声を拡大するための機器で考えてみます。
「スマイルキッズ AYD-104」は文字サイズが少し小さいような気がします。このデザインであればもう少しサイズを大きくしても問題なかったでしょう。ボリュームと電源スイッチはわかりやすい配置でひと目でそれと分かるのは良いと思います。ただ、ボリュームつまみの矢印はもう少し大きくても良かったのではないでしょうか。
「パイオニア TF-TA11」は文字サイズは割と大きくてわかりやすいと思いますが、ボリュームつまみが番号で表示されているのは矢印よりもわかりにくいでしょう。こういう連続したボリューム調整のような場合は番号そのものにはあまり意味が無く、それよりも回す方向が重要なはずです。9番より1番の方が大きいと思う人もいるでしょうからね。
ということで、視認性に関していえば「OHM ASU-1740K」が一番わかり易いと思います。この製品は電源自動OFF機能が搭載されていることで通話ごとの電源操作が不要であるため表面にはボリューム調整用ダイヤルがあるだけですし、そのダイヤルを回す方向もすぐ判るようにデザインされています。
まあデザイン的には少し野暮ったくはありますが、高齢者にとってはありがたい配慮だと思います。
聴覚障害支援グッズを作るメーカーからすれば、一つの製品にいろいろな機能をたして付加価値を高めたいわけですが、実はそれが高齢者にとってわざわいとなっている面は見逃せません。
若い人のように盛り込まれている機能を理解することさえ難しいし、ましてその操作方法を覚える気も起こらないのではないでしょうか。
つまりお年寄りにとっては単機能製品が一番使いやすいのです。
これについては「手元用スピーカー」を例にとって考えてみましょう。
ワイヤレス式のスピーカーは充電台から切り離して好きなところに持っていくことができるのが売りですが、お年寄りが手元用スピーカーを使う場所はほぼ一箇所限定でしょうから、充電のたびに充電台に持っていくことがそもそも余分な行為におもえるでしょう。
「東芝 TY-WSD11」などは送信機と受信機の間で双方向通話ができるという素晴らしい機能を持っているのですが、やはり手元用スピーカーとして使うだけならそんな機能は不要であって、余分なスイッチ類が却って邪魔に見えるはずです。
その他、ラジオ付きとかテレビリモコン付きなど色々な機能をもたせた製品もありますが、機能がある分だけ操作するためのスイッチ類が増えるわけで、機能を付加すればするほどお年寄りにとってはどんどん判りにくいものになっていきます。
実は、色々な手元用スピーカーを試したあげく、最後にはロングコード付きのヘッドホンにしたという高齢難聴者の例をいくつも知っています。これなら色々な操作を覚えることや、充電や電池交換などの面倒な手間も必要ないわけで、しかも音は一番良く聞こえるのですから、最終的にそれを選択した気持ちはよくわかります。
高齢者用聴覚支援用品の選定時は、単機能で操作スイッチ類の数は少なく、操作しやすい大きさであり、操作方法がわかりやすい表示がなされている製品を選ぶことが重要になります。