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聾者、突発性、中途失聴、老人性難聴者などが送る様々な人生

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 聴覚障害を扱った物語


遠い音

遠い音

フランシス・イタニ 作
村松 潔 訳


5歳の時に猩紅熱にかかり聴覚を失ったグローニアを中心に、それを支える家族(中でも、小さい時に絵本を見せながら優しく教えてくれた祖母のマモや、自分では聞き取れない他人の話し声を口真似通訳してくれた姉のトレスなど)との生活、愛する家族と引き離されて入学した聾学校での学習の日々、そして成長後に互いに愛し合い結婚した健聴者の青年ジムとの暮らしが、第一次世界大戦を背景にしながら繊細なタッチで写実的に描かれている長編大河小説です。

戦争という大きな歴史のうねりの中に巻き込まれながらも懸命に生きていく人々のなかで、耳を塞ぎたくなるような音からも否応なく隔てられている聴覚障害者。果たして耳が聴こえないということはハンディなのか、それとももしかしたら幸福なのか、ということなども考えさせられた秀作です。
かなりのボリュームがありますので、時間をとってゆっくり読書を楽しんでいただきたい小説です。

では、本書の中で心に残った一節をご紹介しましょう。

「教えて欲しいんだ、僕にも理解できるように。耳が聞こえないのはどういうことか。まず最悪なのはどんなことなんだい?」彼は身を乗り出して、耳をそばだてた。
二人は青い毛布の上に座っていた。そこにトレイを運んできて、朝食をとったのだった。下の通りからは、そこは見えなかった。秋の終わりの太陽で部屋は暖まっており、陽光のなかで、彼女の赤い髪の色合いが微妙に変化するのがわかった。「最悪の事?」彼女はちょっと考えた。「ほかのだれもが知っていることを知らないってことかしら。いいえ---もっと悪いのはわざと知らされない時ね---ごく細かいことを---伝えるほど重要じゃないと考えて、知らせようとしない人がいるから」
「それから?ほかにもぼくにはわからないことがあるんだろう?」
それについては考える必要はなかった。
「わたしが世界をどんなふうに見ているか」
「きみほどたくさんのものを見ている人はいないよ」
「わたしが見ているものはふたつに分かれているの。動くものと動かないものに」
彼の顔に驚きの色が浮かび、彼がその情報を頭にしまい込もうとしているのがわかった。彼女にはそれがうれしかった。「それは知らなかったでしょう?」
「でも、今は知っている」
「そのおかげで私は生きていかれるの」と彼女は言った。


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