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マイホームの新築時に気をつけておきたい注意点

構造について 

「構造材を雨に濡らしてはダメ」

構造材を雨に濡らしてはダメ説明図

最近は(特に都市部では)建前のときに餅まきをする習慣が無くなりました。
昔はほとんどの新築家屋で餅まきがありましたから、子供のときには「建前がある」と聞けば、夕方を待ちきれずに現場にたどり着き、今か今かと待ち構えていたものです。

建前(棟上げとか上棟とも言います)とは木造住宅を作る時に、柱を立ち上げて棟木を通すことを言います。
どうして夕方かというと、大工さんがその日ばかりは大勢の手伝い仲間を連れてきて基礎だけのなんにもない状態から一日がかりで棟上げまでするわけですが、できれば屋根に野路板を貼り、そのあとで雨が降っても濡れない状態にまでしておきたいので、どうしても夕方まで作業がかかるというわけです。
翌日も晴れることがわかっていれば棟木までにしておいても良いのですが、なにせ昔は今のように天気予報があてになる時代ではありませんでしたから、なんとかそこまでは仕上げて置きたかったわけです。
ですから、まだ日が明るい時刻から現場にいって待ち構えていても、なかなか作業が終了せずに、ついには日が暮れて暗くなってから餅投げが始まることも珍しくありませんでした。今考えると、薄暗がりで投げられた餅を奪い合うわけですから大変危険なわけですが、そんなところで怪我したところで誰も文句をいうような人はいませんでしたね。今なら現場で事故などが起きれば建築会社や施主が管理責任を問われるでしょうから、そんなことも餅まきという習慣が無くなった原因の一つなのかもしれません。

建て前
さて、餅まきを遅らせてでもなんとかその日に雨仕舞だけはしておきたかったのは、柱や梁といった構造材を雨に濡らしたくなかったからです。
とくに真壁工法においては構造材そのものが仕上げ材になるわけで、紅白の布などを巻いて大切に扱っていたので尚更です。
そんな事もあって「住宅の構造材を雨に濡らしてはダメ」というのは半ば常識とされていましたので、構造材が雨に濡れていたりするとまるで欠陥住宅のように文句をつける施主も多かったのです。
実際は屋根ができたあとでも、横殴りの雨などでかなり吹き込む事もあったでしょうし、台風に遭ってずぶ濡れになったケースも有ったはずですので、そんなときには大工さんもどんな対応(言い訳)をしたのでしょうね。

さて話は現代に戻ります。
1970年代から日本でも建てられ始めたツーバイフォー工法(枠組壁工法)も今では全新設住宅の12%強までシェアを伸びてきましたから、かなり一般化したといって良いでしょう。
実はこの工法は建築時に構造材が雨に濡れることを前提にして建てられています。
これは、柱や梁といった線材を組み合わせてまず屋根を形成し後から壁や床を作る在来工法とは異なり、土台から床、壁、屋根へと順番に線材と面材でもってパネル化して組み上げていく関係で、どうしても屋根に行き着くまでに時間がかかるからです。
住宅の規模や階数にもよりますが1周間や2週間は平気でかかりますから、雨の多い我が国では雨仕舞が終わるまでに何度か雨に打たれることは仕方がありません。
そこでこの工法では、構造材(ツーバイ材や合板類)は雨に濡れても大丈夫なものを使い、釘類は塗装されたものを、金物類はメッキされたものを使用して、期間中に少々の雨に(かなり大雨であっても)降られようと品質的になんの問題もおきない様にしてあります。

ツーバイフォー工法現場


私もかなりこの工法で家づくりのお手伝いもしましたし我が家もそうですので、何度も何度も雨に濡れた現場を観てきました。そして、どの現場も完成したあとになんの問題も起きなかったのは体験済みですので自信を持って言えますが、(正しく管理されたツーバイフォー工法であれば)構造材が雨にぬれても全く問題はありません。
ですから、これからツーバイフォー工法で家をたてる施主の方には、予め「雨に濡れて建てる家」であることをくどい程にアナウンスしてきました。おかげでこの点についての施主からのクレームは無いのですが、やはり親戚や近所の方からは「構造材が雨に濡れているけど大丈夫なの?」と親切な?忠告をいただいたケースもあったようです。
最近はツーバイフォー工法でも、工場でほとんど構造材を組み立てて現場ではそれをクレーンで吊り上げてジョイントするだけの「パネル工法」を用いる物件も多くなって来ましたので、上手くいけば構造材を全く雨に濡らさずに済む現場もありますが、やはり「雨に濡れながら建てる工法」だと考えて置かれた方がよいでしょう。(その方が精神的ストレスもありませんので。)

では、在来工法ではどうなのでしょう。
実は在来工法でも最近は(高気密高断熱にし難い)真壁工法ではなく、仕上げ材によって構造材が見えなくなる大壁工法の物件が多くなってきました。
そういう現場ではツーバイフォーの利点を取り入れて雨にぬれても大丈夫な材料や作業方法を用いているケースも増えてきています。(その方が現場管理が楽ですから。)

自分が建てる家がどういう工法で雨に対する耐性はどうなのかについては各建築業者によく確認しておいたほうが良いとは思いますが、なにがなんでも「構造材は雨に濡らしてはダメ」ということでは無いことも覚えておいていただきたいと思います。




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